点Nの軌跡

競プロの話または日記

点Nと自動車学校

途中まで書いて、多くの人が経験する話なので不要なところは大きくカットしたほうがいいということに気付いた。

入校以前

はじめに

運転免許。それは現代社会を生きる我々日本人にとって最も身近な国家資格である(点N調べ)。交通網の発達した都市部の住民にとってはどうだか知らないが、少なくとも自分の住んでいるような場所では持っておいて損はない。本当は3年生の春に取っておけばよかったものを、基本情報技術者試験の勉強だのなんだので流し去り、そのまま月日が流れて5年生の10月。未だ落ち着かない新型感染症のせいで必要以上に長く続いた受験シーズンも終わり、ちょっとだけ落ち着いてきた時期。自分もなんだかんだでそろそろ免許をとるべき年齢だし、さすがに車の免許は欲しい。しかたなく重い腰を上げ、動き始めた。

戦略

免許センターで適正試験・技能試験・学科試験を受けるのが正規ルートだが、普通は自動車学校を経由する。とくに指定自動車教習所、いわゆる公認の自動車学校を卒業すれば技能試験をパスでき、こちらが王道ルートになる。あと、合宿は絶対に性に合わない。

AT/MT問題

最初で最後、そして最大の選択である。最初で最後なら最大なのは明らかだけど、ちゃんと大きい選択。

  • MTのほうが料金が高く、教習時間が長い。
  • 運転操作がぜ~んぜん違っていて、MTのほうが難しい。
  • ATだと、MT車を運転できない(免許に条件がつく。逆は成立しない)。
  • 現在日本の道路を走る車はほぼAT車のため、基本的にわざわざMTを選択する意味は薄い。
  • しかし、就職先でMT車しかない場合に備えてMTを選択する学生は多いと聞く。
  • が、実際その選択がどれぐらい活きるのかは定かでない。
  • AT/MTの選択ができるようになったのは最近であり、親の世代はMT車の経験者であることも多い。そのため親に相談するとMTにしておけというアドバイスを受けることも珍しくない。

迷ったけど、MT。大は小を兼ねる。

入校

自動車学校に行って受付の係員に申し出る。手続きをその日のうちに済ませたかったので、事前に必要な書類やお金を調べて持参した。一般のご家庭に常備していない書類(住民票など)が要求されたりする。割引サービスもいくつか利用した。書類を書いて、説明を受けて終わり。写真撮影があったかもしれない。担当教官も決められるのだが、このときに誰々はやめてほしい、というような注文を聞いてもらえる。とはいっても、初見だとまずどうにも答えられないのでここは基本的にスルー。担当教官との相性は運である。僕の担当は40代ぐらいの女性だった(といっても、実際に会うまでには結構間隔があいた)。

タイミングを忘れてしまったのだが、手続き時か入校時か、どこかで身体面の検査があった。項目は以下。

  • 視力が片目で0.3以上、両目で0.7以上(鬼門)。
  • 四肢が自由に動かせる。
  • 音が聞こえる。
  • 信号の色が判別できる。

目が悪いので視力検査は緊張した。事前にメガネ店で視力検査を受け、度をあげなくてもよかろうという判断をもらっていたので普通に大丈夫だった。

手続きが終わったら、いつの入校式に来てくださいねという感じで帰された。秋なので本来は人が少ない時期なのだが、新型感染症のせいで春や夏の教習生が秋にずれ込んでしまい、かなり忙しくなっているという話を聞いた。

適性検査

K型とかOD式というやつが一般的だが、OD式のほうだった。注意力と判断力が大事そうな筆記テストで、後半が心理テスト。前者は単調な作業。自分が得意なタイプのやつだったので、わりとサクサク進む。なんかうまいことできてはいるのだろうが、これと運転能力にどれほどの相関があるのかは今もあまりわからない。後者は本当に心理テストなのだが、わりとあからさまな内容が結構ある。全部「いいほう」を答えるのも、それはそれでだいぶ危険な気がする(そんな聖人はいないと思っているため)。結果って公表していいものなのだろうか。12時の方向。

第一段階

仮免許取得までをさす。修了検定に合格すれば第二段階に進むことができる。

学科教習

教室で、車を運転するときのルールを学ぶ。この日のこの時間はこの単元、というように割り振ってあり、全部の授業に出なければならないので、狙っていたコマに技能教習を入れてしまうと面倒なことになる。中心となる内容は道路の走り方で、その他免許制度についても学ぶ。

教室に入ると、たいてい後ろのほうが埋まっている。アクリル板越しに教室を見渡すと、高専とかいう偏った環境の学校にいたせいか普段見かけないタイプの人間ばかりの印象。男女比はおおむね1:1。

授業の流れはだいたい一緒で、教官の話を聞きながら教本を読んで、ビデオを見る。教官にもよるが、当てられて発言する必要があることもあった。やめてくれ。教本には嘘やろみたいな本当のことも書かれていたりする。現実世界には駐車場などに入るため歩道に進入するときに必ず一時停止している車はいないし、踏切でいちいち窓を開けている車もいない。あと、ビデオは同じ映像をやたら使いまわす(大事なことなので何回も言ってくれているのだ)。

学科教習の仕上げ的な存在として、効果測定というテストがある。○×形式で、45/50問以上をめざす。半分ぐらいは常識というか道徳というかで問題なく解けるのだが、それでも普通に難しく、全部安全側に倒すのもまた違ったりする。案外一時停止しなくてよかったりするし、徐行義務が生じなかったりする。ちなみに最近は便利になったもので、対策にはeラーニングシステムが有効である。長い間世話になった。

技能教習

最初はシミュレーターでの模擬走行で、ペダルの役割とか、ハンドルの回し方とか、そういった超基本を学ぶ。機械音声がハンドルを親の仇のように回させてきたので、全然ついていけなかった。シミュレーターが終わったら、次の時間から実際の車を運転する。文章だとしれっと運転しちゃっているが、1回目は普通にめちゃくちゃ緊張する。感染症対策のため、乗車の際には毎回同乗する教官が除菌シートをくれる。

MT車の場合、アクセルとブレーキのほか、左足で操作するクラッチペダルがある。これと手元のギアをいい感じに操作しなければならず、下手なことをするとすぐにエンストして止まってしまうので、発進するだけでも最初は一苦労だった。加減速を習得し、大きく外周できるようになったら、場内のコース上にある交差点、信号、障害物、S字カーブ、クランク、それから坂やら踏切やらを順番に走れるようにしていく。MTだと坂道発進がどうとか言うけど、S字のほうが難しいし、なんなら右左折が一番の山。操作が忙しすぎる。何回か補習も受けた。ちなみに教官はあまり多くを語らないタイプだった。個人的にはもうちょっと指示厨してくれても良かったけど。

教官はたまに違う人になる。若くて一部の教習生にモテてそうな兄ちゃんとか、何やっても優しい人とか、だるそうなおっさんのときもあった。ため息つくのはやめてくれと思うのだけど、実際のところ一番メンタルにくるのは最後のアドバイスに必要以上のポジティブさと期待してるよの気持ちを乗せてくるタイプの人だったりする。

技能教習の最後にはみきわめというのがあって、教官が検定へのGOサインを出すか出さないかの判断を下す回になる。教習所にもよるだろうが、自分的にはまだまだ不安があっても結構GOだったりした。

修了検定

技能試験、学科試験、適性試験を受ける。がっつり一日仕事。ちなみにもう年末。

技能

指定のコースを走り、まずいところがあるとその都度まずさに応じて減点される。持ち点100を70残して走り終えれば合格。なにをもって「まずい」とされるのかは決まっているし、どれぐらいまずいのかも検索すれば出てくるが、見ると自信がだいぶなくなる。コースは当日に発表される。前の受験者の受験時に不正防止目的で後部座席に乗るのだが、この時に不正うんぬんそっちのけでコースの下見。ちなみにコースを間違えると軌道修正中の減点リスクが高まるので間違えないほうがいい。

MTの受験者はATよりちょっと少ないぐらいで、でも思ったより多い。むしろ男はMTのほうが多い。自分は最後から2番目。検定特有の緊張感のせいか、前の人はハンドブレーキをおろさずに発進しようとしていた。

自分の番。前の人を見てハンドブレーキやギアの確認には気を付けた。途中、検定特有の緊張感のせいか、なんでもないところで左足がガクガクして車も一緒にガクガクした。あと、検定特有の緊張感のせいか、左折なのに左からくる他の教習車(当然と言えば当然だが、検定中も他の車は普通に走っている)をしきりに気にしていた(左折時の走行ラインと左からくる車の走行ラインは交わらない)。

次の人で最後なので自分がもう一度後部座席に乗った。なんとなく自分と似た雰囲気を感じる人だった。坂道でちょっとだけ手こずったようだったが、総合的に見て自分よりうまかったように思う。終わった途端にこの態度、いったい何様なのか。終わった後で検定員から簡単なアドバイスがあったのだが、自分と最後の人、2人まとめてビビりすぎで加速が弱いというお言葉を頂いた。はい。

合格発表までは時間が有り余るので不安な時間を過ごした。受かった時のために教本を読んでみた。しばらくして結果が掲示された。点数は不明だが、なんとか合格していた。半分ぐらい落ちていたかもしれない。前の人は落ちて、次の人は受かっていた。

学科

効果測定とほぼ一緒。大量に落ちることはないが、数名は落ちる。とくに言うことは無い。

適性

もっと言うことがない。昼飯を食いそびれた。

第二段階

年が明け、教習所の外へ。卒業検定に合格すれば卒業。

学科教習

安全のための知識の割合が多い印象。めんどいのは駐停車。他は積載やけん引など、微妙な内容が多い。応急救護もやる。以前に人工呼吸は無理にしなくてよくなったというのは聞いていたが、どうやらこのご時世なのでマジでやらないでいいとなったらしい(詳しいことは厚労省のサイトなどをあたってほしい)。このごろから自動車学校は書き入れ時を迎え、教室内の人数はどんどん多くなっていった。効果測定の合格ラインは90/100。配点の高いイラスト問題で稼げるので前回よりも楽な印象。

技能教習

教官のチュートリアルなしに路上に急に放り出されるので最初の3時間は怖い。徐々に慣れてくるし、外の道路は走りやすいようにできている。

いつのことだかは忘れたが、ある日の教習の後、教官に自分のことが嫌いなのかと聞かれたことがある。指示には従っているが反応がないことが多いらしく、教官も人間なので返事がないと不安になるらしい。正直ぜんぜん自覚がない(全部返してるつもり)のでさすがに戸惑った。それもそれで問題なので気を付けますとだけ言って終わったが、さすがにいろいろ不安になった。

いろいろな教官と当たった(上のこともあるし、そこに悪い意味がないことを願う)が、やはり学校関係の話をすることは多い。よほど相性がいいときは別だが、基本的に高専生には不利である。高専とか進学先の話をしたときに頭いいみたいに思われたりすることもあるけど実際そういうのってあまり嬉しくなくて、高専だって面接だけで入ったようなものだし、大学は国立だけどしかし編入(正面突破よりも難易度が低いといわれているし、そうだと思う)だしみたいな評価の難しいあれだし。その辺がめちゃくちゃ難しい。正規ルートを外れた者の苦しみか。

技能教習の中でも特別なものがいくつかあるが、その代表が高速教習である。ほかの教習生(明るい女の人だった)と交代で運転するのだが、教官なんかいつもと対応全然違いませんでした?サービスエリアで飲み物買ってくれたのはうれしいけどさ。

学校の試験明け、なぜか知らないが急に時間割が変更になり、急遽予約をキャンセルした。そのせいでしばらく期間があき、春休みに入った。久々の教習に行ったところ、なんか教官の機嫌が悪かった(気がする)。忙しい時期だし卒検の予定日とか決めたあとで教習をキャンセルしたのは悪かったけど、文句があるなら学校に言ってくれ(卒検前だから普段以上に真面目にやってただけかもしれない)。

冒頭、徐々に慣れてくるとはいったが、慣れとは恐ろしいものである。卒検も近づいたある日の(というか前日の)教習所への帰り道。光の加減か、左折時に奥からやってきた横断者に僕も教官も気づかなかった。横断しはじめでじゅうぶんに距離があったので何事もなかったが、卒検でやったら一発アウトだし、そうでなくても危ないし。こわ。

卒業検定

修了検定とは違い、技能のみ(それ以外は免許センターでやるので当然だが、気付かなかった)。路上試験と場内試験の2パート。自分はトップバッターだった。なんて日だ。

インターネット上では、路上においては安全運転を心がけ、いつも通りに走り、一発アウトを引きさえしなければどうにかなる、そういう意見が見られる。実際、修了検定のようなややこしい道ではないのである程度正しいのだが、こういう日に限ってイレギュラーが発生したりするもの。これまたネットにあるような大イレギュラーはなかったが、たとえば

  • なんか作業してて反対車線が埋まっている
  • 隣に大型トラックがくるし、しかも前に入ってくる
  • いつもは人がいない信号なし横断歩道に横断者がいる
  • しかもその横断歩道の手前がのぼり坂になっており坂道発進を求められる

ぐらいのことはあった。とくに横断歩道まわりは怖かった。

帰りは次の受験者の受験コース。発車時に運転席のシートベルトが半挿しになっていたらしく一瞬ヒヤッとしたが、それ以外は問題なかったように見えたので合格の可能性はじゅうぶんありそうだなと思った。終わった途端この余裕、いったい何様なのか。

場内試験は左方向転換だった。これでもかというぐらい慎重にやった。現実世界だとちょっと迷惑かもしれない。

合格発表まではだいぶ暇だった。暇すぎておかしくなるかと思ったが、意外と大丈夫だった。途中、同時開催された修了検定の合格発表があった。自分の担当教官が落ちた子に励ましの言葉と共にお菓子か何かをあげていた。そういうことするタイプの人だったんだ。僕のときなんにも言われなかったけど(受かったからで説明がつくだろうか)。

トップバッターなので相当待ったが、昼には結果が出た。ちゃんと合格していた。よく見ると、MTの受験者は全員合格していた。しかもATの受験者は半分しか合格していなかった。何があったのだろうか。

卒業

卒業式の場所がわからなくて遅刻しそうになった。そのへんにいたスタッフに聞いたら場所を教えてくれて、急げといわれた。免許センターに持っていく書類を書いて、はじめて見る偉い人からの重要で退屈なお話を聞いて解散。結局教官と話すことは一度もなく、そのまま帰宅。わざわざ待つほどのことでもないし、どうもあんまり好かれてない感じだったし、まあそれでいいや。

免許センター

免許センター、車がないと行けないような場所にありがち。早起きして頑張っていった。登校中の小学生を眺めていた。足が寒そう。到着すると、予想していたよりも人が多い。窓口でお金を払ってから(ここまではうまくいった)別の窓口に書類を出すのだが、質問票を書き忘れたので一度弾かれ並び直し。係員の作業を見ながらリアルPapers,Pleaseだなぁと思った(この頃VTuberの間でなんか流行っていた)。書類を出したらすぐさま試験会場へ流された。

試験の内容はいちいち覚えてないが、微妙な問題が多くて少し難しかったように感じた。終了後すぐにマークシートが機械に通され、モニターに合格者の番号が掲示される。合格率は90%ぐらいに見えた。大きな声をあげ手を叩いて喜んでいる学生さんがいた。そんなに人生かかった試験でもないと思うのだが。

だいぶ長い休憩をはさんで写真撮影やら適性検査を済ませ、偉い人の話を聞いて免許証をもらう。順番は最後から3番目だった。ハンバーガーを食べて帰った。

おわりに

半年近くかかってしまった。思ったより長くなったが、卒業前に終わらせることができて安心。

体感として、教習の時間はあまりにも短すぎる。これで公道でていいですよ、怖すぎません?